漢方薬一覧
冬虫夏草(とうちゅうかそう)をご存じでしょうか?
古来より、滋養強壮、不老長寿の高貴薬として珍重され、秦の始皇帝や楊貴妃も愛したとされる冬虫夏草・・・
昆虫(蛾)のからだにバッカク菌が寄生して育ったキノコの仲間です。冬は土の中で蛾の幼虫等に寄生し栄養分を吸収して菌糸を作ります。
やがて春になると蛾(冬虫)は死んで、菌糸が成長し、夏になると死んだ蛾の頭から棒状のキノコが生えてくる(夏草)ことから、『冬虫夏草(とうちゅうかそう)』という名が付けられました。
冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、日本では約300種、世界では約400種もの種類があります。しかし、中国で薬理効果が確認され、漢方薬として認可されているものは、中国のチベットや青海、甘粛、雲南、四川など標高3000~5000mの高山に生息するコウモリガの幼虫に寄生したバッカク菌が成長し子実体を作ったものだけです。
中国では、コウモリガ以外の蛾、蝉、蟻、蜂、蜘蛛などの昆虫に寄生した冬虫夏草は「虫草」として区別しています。
中国では、冬虫夏草には、からだをあたため、おもに『肺』と『腎』を強めるはたらきがあるといわれています。
中医学では、肺は呼吸以外に、免疫や皮膚の機能にも関係し、腎は、排尿などの水分調整だけでなく、生殖、生長、老化にも関わります。
腎虚(老化や過労による内分泌機能の衰えなど)による生殖機能の低下、腰膝のだるさや衰え、免疫の低下などの症状に冬虫夏草を使います。滋養強壮薬といわれる所以もここにあります。
慢性化した咳、気管支炎、喘息、肺気腫、肺結核などの慢性呼吸器症状に対して、中医学では肺陰(潤い)を補い、腎を強くすることが必要と考えます。
冬虫夏草には、肺と腎両方の機能を強化するはたらきがあります。また、『止血化痰(出血を抑え痰を除く)』のはたらきもあるため、咳による喀血や切れにくい痰にもよいといわれています。
また、マウスやラットによる実験において、冬虫夏草には、免疫調整作用や癌の増殖を抑える作用、不整脈軽減作用、心臓保護作用など数多くのはたらきが報告されています。
日本でも、冬虫夏草を使った漢方薬や健康食品は非常に多いですが、品質の差が大きいため良品を選んで頂く必要があります。
【冬虫夏草を用いた製品】
中国では医薬品として用いられる冬虫夏草ですが、日本では、医薬品ではなく食品分類として区分されています。
また、冬虫夏草(とうちゅうかそう)は近年、金より高いといわれるほど高価な生薬になっています。以前は50gで4~5万くらいでしたが、ここ最近では50gで25~30万以上と価格の高騰に歯止めがかかりません。
産出量の減少や買い占め、海外への輸出の増加など様々な原因により、ますます高価で貴重な生薬となってしまっています。