漢方薬一覧
抑肝散(ヨクカンサン)は、読んで字のごとく東洋医学で言う五臓六腑の五臓の一つである肝(カン)を抑える薬です。宋時代の「保嬰撮要」という古典書で紹介されています。
漢方では“肝”は心や精神をあらわします。抑肝散は、その意味での“肝”、言いかえれば精神神経症状を抑えるための方剤です。
神経症、不眠症、小児夜なき、疳の虫、認知症
抑肝散は本来、子どものひきつけなどに用いられた処方です。一般に癇が強いと表現される症状、神経過敏で、興奮して眠れないなど“肝”が高ぶった症状を鎮めます。
「癇(かん)が強い状態」では、神経が興奮して眠れない状態になっています。このときは「癇」は、「肝」の機能失調によって起こると考えられています。ここから抑肝散と呼ばれています。
抑肝散では、古典で「母子同服する」という一文があります。神経過敏な子どもの場合、やはりそのお母さんにもイライラなどが見られることが多いため、抑肝散を一緒に服用すると、お母さんも落ち着き、子どもの治りも早いということです。このことから次第に大人のイライラや興奮、不眠にも広く使用されるようになりました。
抑肝散には、子どもの夜泣きやひきつけ、癇癪(かんしゃく)に対しても使用できます。夜泣きや癇癪は、どちらも神経の高ぶりによるものです。そのため、これら子どもでの神経の高ぶりにも有効なのです。
子どもに有効な漢方薬であることから、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の児童に抑肝散が有効であると考えられています。
大人でも、精神症状が関わる疾患には、気分変調障害や不安障害、緊張型頭痛などが知られています。このような症状にも抑肝散はよく用いられます。それだけでなく、認知症やうつ病の症状改善に応用されることもあります。このときは、西洋薬の併用して用いられることが多いです。
また、てんかんや熱性痙攣に対しても、西洋薬の補助として用いることで発作回数を減らすなどの効果が期待されています。
認知症患者では、記憶障害、見当識障害などの中核症状以外に、周辺症状として幻覚、妄想、抑うつ、せん妄、興奮、攻撃的言動、徘徊などの多彩な精神症状や行動障害が認められます。
最近では、抑肝散の認知症患者の行動・心理症状(BPSD)に対する効果が期待されています。
また、アルツハイマー型認知症の補助治療にも用いられます。認知症では、徘徊や攻撃的行動などが問題となります。これら認知症による周辺症状を抑肝散が抑えるといわれています。
なお、マウス実験でも、抑肝散は攻撃行動や不安、不眠を改善する作用が確認されています。
抑肝散は認知症の周辺症状(興奮、怒り、徘徊、不眠)に処方されることがあります。認知症の病因の一つとされるグルタミン酸神経系の機能異常を改善する作用があるのではと推測されています。
発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢、眠気、倦怠感
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