目・耳・鼻・口のお悩み
上咽頭炎はのどの奥の上部(鼻とのどの境目あたり)にある「上咽頭」と呼ばれる部位に起こる炎症性疾患です。
この部位は口を開けて確認するような一般的な診察では見えないため、見落とされがちな疾患になります。
日本人の約5人に1人が何らかの形でこの炎症を経験しているにも関わらず、その認知度はあまり高くありません。
上咽頭の表面は細かい毛で覆われているため、空気を通って侵入してきた細菌やウイルスがくっつきやすくなっています。さらに私達の体を外敵から守るリンパ組織が密集しており、免疫系の第一関門として働いています。
ところが、細菌やウイルスの攻撃に勝てず、この部位で炎症が起こると上咽頭の炎症のみならず、全身に様々な影響を及ぼす可能性があります。
上咽頭炎は症状の経過によって「急性」と「慢性」に分けられます。
風邪を引いた時などに突然現れる症状で、以下のような状態が見られる場合はこれを疑います。
上咽頭炎の症状がなかなか治らず、上咽頭での炎症やうっ血が長期間続いている状態を『慢性上咽頭炎』といいます。
慢性上咽頭炎では以下のような症状があらわれやすくなります。
上咽頭炎が生じる原因としては以下のような可能性が考えられます。
急に起こったのどの痛みで病院にかかると、トラネキサム酸(抗炎症薬)、カロナールやロキソニン(解熱鎮痛薬)、総合感冒薬、抗生物質、うがい薬などがよく処方されます。
それに加え、後鼻漏や咳、痰といった症状を伴う場合は鎮咳薬や去痰薬(カルボシステイン、アンブロキソール)、吸入薬なども一緒に処方されることが多いです。
また、Bスポット療法(EAT療法、上咽頭擦過療法)といって、患部である上咽頭に薬剤を浸した器具を直接擦り付けて炎症を鎮めるような治療法もあります。
中医学では外部から侵入した邪気(病気を起こす原因)によって炎症が生じ、上咽頭炎が発生すると考えます。
急性期に多い病態としては「外感風熱」といって、外から侵入した風邪(ふうじゃ)が熱を持ち、「風熱邪」になった状態を指します。
これにより突然起こるのどの痛み、乾燥感、灼熱感、腫れ、発熱などの症状が現れてきます。
漢方薬は上咽頭で発生している炎症(=熱)を抑えて症状を緩和していくような銀翹散、涼解楽、駆風解毒湯などを用いることが一般的です。
上咽頭炎の症状がなかなか改善せず長引く、一度治っても再び繰り返してしまう場合は、“衛気(えき)”という体表面の防御力が低下している可能性があります。
この場合は、免疫系統に関わりの深いバリア機能を補うような玉屏風散、衛益顆粒などを用いることが多いです。
また、“衛気”が不足している方の中には“脾気虚(ひききょ)”といって胃腸の機能が弱っており、食べたものを消化吸収して“衛気”の元となる“気”(=エネルギー)を作り出せていないことがあります。
食欲がない、お腹が空かない、少食、軟便や下痢、胃もたれしやすい、胃が痛くなりやすいといった消化器系の不調がある方は、胃腸を補うような補中益気湯、参苓白朮散、健脾散顆粒、健胃顆粒などを用いることで上咽頭炎になりづらい体を作っていく方向性もあります。
季節の変わり目は急激な寒暖差で体に負担がかかり、風邪を引きやすい時期になります。
特に普段のどの違和感から風邪を引きやすい人は、お困りの症状の裏に上咽頭炎が隠れているかもしれません。
このような症状が続いている方、病院で処方されるお薬やBスポットなどの治療をしてもなかなか改善が見られず、何度も症状を繰り返している方は一度漢方薬を試してみてはいかがでしょうか?