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高血圧と漢方について

高血圧高血圧は、日本人にとても多い疾患のひとつで、約4300万人いるといわれています。
なかなか自覚症状がでないため、検診で指摘を受けてはじめて、高血圧であることを知る人も多いようです。

高血圧の治療では、降圧剤による血圧コントロールが一般的ですが、一生飲み続けたくない、できることなら降圧剤なしで血圧を下げたいという人も多いです。

高血圧は、常に血管に負担をかけている状態で、血管の内壁に傷がついたり、柔軟性が減って硬くなって動脈硬化を起こしやすくなります。さらに、脳卒中や心疾患、慢性腎臓病などの重大な病気につながるおそがあります。

最近の研究で、脳卒中は男女問わず血圧が高いほど発症率が高まることが分かっています。

高血圧を漢方で考えると?

漢方では、高血圧の原因の多くは、血行不良による血の汚れ、また血液を送り出す『心』の失調や心との影響の深い『肝』や『腎』の機能低下や乱れなどによると考えます。

もちろん、生活習慣が大きく影響する高血圧。塩分やコレステロールの高い食生活や肥満、運動不足、喫煙、ストレスなどのリスク要因を見直し、生活習慣を改善することは基本です。さらに漢方薬で、高血圧になりにくい体質づくりをしていきます。

高血圧 漢方では??

高血圧に用いる漢方は、血流を良くする、肥満を改善する、自律神経を安定させる、のぼせなどの熱症状をとる、などの作用により血圧を正常にしていくものです。血圧そのものを下げる降圧剤とはここが大きく異なります。

このため、同じ高血圧と診断されても、漢方では個々の体質によって薬の種類が変わってきます。実際の漢方相談で多い高血圧のタイプは『瘀血(おけつ)』『肝火(かんか)』『陰虚(いんきょ)』です。

①  毛細血管が血行不良を起こした『瘀血(おけつ)』の高血圧

冠元顆粒漢方では、血行不良で血の流れが良くない状態を“瘀血(おけつ)”といいます。

なかでも、毛細血管(全身の太い血管に栄養を補給する細い血管)の目詰まりは、血圧を上昇させる原因となります。

高血圧の人の約90%は本態性高血圧(原因が特定できない高血圧)と言われていますが、毛細血管の瘀血が原因となっている場合が多いことも分かってきています。

普段から肩こりや頭痛、手足のしびれなどが起こりやすいのも瘀血の特徴です。
瘀血が続くと、劣化したゴムのように血管が硬くなり、血栓や動脈硬化を起こしやすくなると言われています。

瘀血による高血圧には、全身の太い血管から毛細血管までの血流を改善する冠元顆粒や血府逐瘀丸などの漢方薬を用います。

②  自律神経の乱れで気が上逆した『肝火(かんか)』の高血圧

降圧丸怒りや憂鬱など精神的なストレスや不眠が続くと、自律神経が興奮し、頭の方に陽気がこもり熱っぽくなります。そして、からだの陰陽のバランスが崩れ、血圧が不安定になります。

高血圧の他、イライラや憂鬱、頭痛、めまい、口の渇き、ほてりなどの症状がみられます。

肝火による高血圧には、上がった熱を鎮め症状を緩和させたり、自律神経を安定させる
降圧丸(こうあつがん)、釣藤散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蠣湯、竜胆潟肝湯、黄連解毒湯などの漢方薬を用います。

③  加齢でからだが消耗した『陰虚(いんきょ)』の高血圧

瀉火補腎丸慢性化した高血圧や加齢とともに血圧が高くなっている場合、腎陰(からだの潤い)の不足(陰虚)が考えられます。

からだに熱がこもりやすく、陰陽バランスが崩れて血圧が不安定になっている状態です。若い人でも、日常的に睡眠不足や過剰なストレス、体力の消耗が続いていると、陰虚体質になりやすく高血圧の原因になります。

高血圧の他に、からだのほてりや渇き、寝汗、めまい、耳鳴り、足腰のだるさなどの症状が出やすくなります。

陰虚による高血圧には、腎陰を補い、こもった熱を潤しながら冷ます六味地黄丸、杞菊地黄丸、瀉火補腎丸、二至丹などの漢方薬を用います。

一般的な高血圧の治療

西洋医学でも、まずは生活習慣を見直すことが基本です。それでもなかなか血圧が下がらないときは降圧薬(血圧を下げる薬)で血圧を安定させます。

日本高血圧学会のガイドライン2014では、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬の4剤を第一選択薬、血圧のコントロールが不十分な場合、複数併用やβ遮断薬など他の薬剤を追加します。最近では、新しいタイプの配合薬も登場しています。

高血圧と漢方のまとめ

日本人に高血圧が多い背景には、食塩の取り過ぎと、肥満とメタボリックシンドロームの増加があります。日本高血圧学会の血圧ガイドライン2014によると、高血圧とは、収縮期血圧/拡張期血圧=140mmHg/90mmhgを越える場合をいいます。

血圧を下げすぎると血流が悪くなり病気のリスクが高まるのではないか、という議論もかつてありましたが、近年のさまざまな大規模臨床データで、その因果関係は否定されています。血圧を降圧目標値(至適血圧:120/80mmHg未満)までしっかり下げるほど、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが下がるという結果が明らかになっています。

降圧薬などで治療をしていない人の中には、白衣高血圧(普段は正常血圧、診察室で測ると高血圧のレベルにある)や仮面高血圧(病院以外の環境では高血圧のレベル、診察室で測ると正常値となる)と呼ばれる人もおりますが、将来、持続性高血圧になる可能性や心筋梗塞などのリスクも含んでいます。このような場合にも、漢方薬で未病先防しているとリスクを軽減できることも多く安心です。

 

血圧は気になるけれど降圧薬の服用を迷っている、漢方で血圧を安定させたい、などのご相談は漢方専門の薬局でされることをお勧めいたします。

今井 太郎(漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師)

執筆者:今井 太郎

漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師

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