婦人病のお悩み
「プロラクチン(PRL)」とは脳の下垂体と言う場所から分泌されるホルモンの一つで、乳腺刺激ホルモンとも呼ばれ、乳汁つまり母乳の分泌を促すホルモンです。
プロラクチンには、排卵を抑制する作用もあり、産後の授乳中に月経が再開されないのはこのホルモンの値が高くなっているためです。
母乳分泌に関わるホルモンですので、妊娠中・授乳期ではない時であれば、正常値は約15ng/mL 以下とされています。
しかし、妊娠していなくても、何らかの原因でプロラクチンの値が異常に高値を示すことがあり、それに伴い無排卵や無月経、乳汁の分泌が起こる状態を「高プロラクチン血症」と言います。
また、血液検査の結果では正常と言われていても、夜間に数値が上昇してしまう場合があり、この状態を「潜在性高プロラクチン血症」と言います。
・薬剤性
胃潰瘍治療薬・抗精神薬・降圧薬や経口避妊薬などの一部にはその副作用でプロラクチンが上昇するものがあります。
・下垂体腫瘍(プラクチノーマ)
プロラクチン分泌部位である下垂体に腫瘍ができることで、この分泌が過剰になり、100ng/mL の高値を示すことがあります。腫瘍自体は良性の事が多いですが、脳内に腫瘍があることで、頭痛・吐き気・視野狭窄・めまいなどの症状を伴うことがあります。
・妊娠後に下がらない
出産・授乳をされた後や、妊娠反応が出たものの流産をされてしまった後など、一度分泌亢進がされた後になかなか数値が下がってこないことがあります。
・原因不明(ストレスなど)
実際は、原因不明な事が多いです。ですが、ストレスや不規則な生活習慣などによる自律神経の乱れなどが、ホルモンバランスを乱れさせているとも考えられています。
中国では昔から、断乳をする際に、炒った「麦芽」を用いていました。
炒麦芽を服用することで、プロラクチンの分泌を抑制できると考えられており、断乳の際はもちろん、高プロラクチン血症の方に用いる事が多いです。
また自律神経は、中医学的に「肝」の臓が司っていますが、それだけでなく疏泄と言う「体の中の巡りを調節したり、外に押し出す働き」も司っています。
そのため、卵子を卵巣から押し出すと言う“排卵”においても、肝の働きは密接に関わっています。また、肝の経絡が胸の脇を通ってもいます。
これらのことから、自律神経:すなわち肝が乱れ、鬱した状態になると、胸が張る、イライラする、排卵障害が起きるなどの症状が出ることもあると考えています。
そのため、これらの症状がある場合は、肝の巡りをスムーズにするような逍遙丸や加味逍遥散と言った漢方薬を用いる事もあります。
薬剤性の高プロラクチン血症の場合は、その原因薬物の減薬や中止が、下垂体腫瘍の場合は外科的手術が必要になりますが、その他の場合は、カバサールやパーロデルなどの薬物療法になることが多いです。
ただ、これらの薬物療法では、吐き気やめまいなどの副作用がつらいと言う方も多く、長期での服用が難しいと言う方も多いようです。
高プロラクチン血症は、下垂体腫瘍のような器質的な問題でない場合は、西洋医学的には様子をみるか、薬物療法での対応になることが多いようですが、薬が合わないとおっしゃる方も多いです。
とは言え、排卵や妊娠維持に抑制がかかるようなホルモンが過剰と言う状態が長く続くと言うことは、長い間生理が安定しないと言うことであり、女性にとってはストレスに他なりません。
また、妊娠を希望されている方には、ブレーキがかかってしまっている現状が大きな負担となっていることでしょう。
そして、そのストレスでまた自律神経が乱れ、ホルモンバランスが乱れてしまうと言う悪循環に陥ってしまっている方も多く見受けられます。
病院での高プロラクチン血症の薬が副作用で合わない、抵抗があると言う場合でも、漢方で対応できることもあります。
お悩みでしたら、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか?