痛み、こりのお悩み
腰痛は、今や国民病とまでいわれるほど年齢に関わらず起こる悩みのひとつです。
ぎっくり腰のような急性症状もあれば、慢性化して痛みやだるさが長引く症状もあります。
変形性脊椎症や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変性すべり症など、加齢や負荷による筋肉や骨、椎間板、神経などの異常が腰痛の原因として最も多いと言われています。
また、精神的ストレスによる心因性の痛みも、最近若い人を中心に増えているようです。
腰痛は、猫背などの姿勢の乱れや運動不足、長時間のデスクワークなど腰に負担がかかりやすい日常生活とも深く関係しているようです。
漢方では、腰は『腎の腑(あつまるところ)』といいます。
加齢や慢性疾患、睡眠不足、偏食などで腎の精が不足する腎虚の状態になると、骨がもろくなり腰痛を発症すると考えます。
また、腰にはからだの栄養となる気や血が流れる経絡が集まっています。
腎虚や冷え、湿気などによって経絡の流れが滞ると、腰の筋肉や骨、関節に十分な気血を届けることが出来なくなって「痛み」が発症すると考えられます。
漢方では、腰痛の原因として次のことを中心に考えます。
冬の寒さや夏場の冷房、高温多湿な環境により寒邪や湿邪の影響を受けると、経絡内の気血が流れにくくなって腰痛を引き起こす原因となります。
昔から、汗をかいた後も寒湿の邪が体内に入りやすく腰痛になりやすいと言われています。
重だるい痛みや気候が悪いと悪化する痛みの原因によくみられます。
漢方薬では、冷えや湿気を除去しながら経絡の巡りを良くする苓姜朮甘湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯や薏苡仁湯などを用いることがあります。
漢方では、痛みの原因のひとつとして「不通則痛(ふつうそくつう)」という考え方があります。
悪い姿勢や運動不足、外傷、過度なストレスなどによって、経絡内の気血の流れが滞るために痛みが起こります。
漢方薬では、血の巡りを整える冠元顆粒、田七人参、疎経活血湯などの活血薬を用いることがあります。
また、ストレスの影響が強い場合は、気の巡りを整える逍遙丸などの疏肝薬を併用すると痛みの緩和に良いこともあります。
長引く腰痛の原因のほとんどは腎虚を伴います。
加齢だけでなく、若くても疲れると腰痛が悪化する場合や腰に力が入らない痛みを伴う場合は、腎虚によって腰の骨が弱くなっていることが考えられます。骨粗鬆症による腰痛も腎虚が原因になります。
漢方薬では、「腎」を補い、痛みを散らす独歩顆粒や牛車腎気丸、参馬補腎丸、イーパオ(食養蟻を含む)などを用いることがあります。
また、ぎっくり腰などの急性の腰痛には、筋肉や筋の緊張を和らげる芍薬甘草湯を用いることもあります。
逆に、慢性化した腰痛には、上記の血の流れを良くする活血薬や炎症を緩和する地竜などを用いることで良くなる場合もあります。
西洋医学的には、腰痛でお悩みの場合、まずは整形外科を受診し、命にかかわる内臓の病気がないことを確認することが大事です。
また、X線(レントゲン)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの画像診断で骨や神経、軟骨などの異常を調べることもあります。
多くの場合、保存療法(薬物療法、リハビリ、運動療法、ブロック注射)や手術療法などが行われます。腰痛の原因が内臓の病気や心因性である場合は、内科や心療内科・精神科による診察が行われることもあります。
腰痛は、検査をしても原因が分からない場合も多く、一般的な痛み止めや湿布などの対処療法ではなかなか改善しない場合もあります。
漢方では、腰だけでなく体全体のバランスを整えながら腰痛の原因を見つけ根本治療していくため、時間が必要なこともありますが、検査で原因が特定出来なかった腰痛にも対応できることがあります。
骨の老化による痛みに対して、老化を遅らせ、骨を強くする補腎薬があるのも漢方ならではのメリットです。
デスクワークの合間にストレッチをする、湯船に浸かって体を温める、ストレスを発散する、良質な睡眠をとる、適度な運動で筋力をつける、など生活習慣を見直してみることも大切です。マッサージや鍼灸などを取り入れてもよいでしょう。
ただし、内臓疾患が原因の腰痛もありますので、痛みが続く場合には、自己判断せずまず診察を受けることも必要です。
長年、腰痛のお悩みでしたら、一度漢方を試してみてはいかがでしょうか?