痛み、こりのお悩み
偏頭痛は、こめかみ辺りにズキンズキンと脈打つような痛みが持続する慢性頭痛のひとつです。特に女性の発症率が高く、ある統計では、毎日60万人もの日本人が偏頭痛で苦しんでいるそうです。
突発的に激しい痛みに襲われることが多い偏頭痛ですが、20~30%くらいは、前兆として目の前にチカチカした光が現れたり、視野の一部が見えにくくなる閃輝暗点(せんきあんてん)が出ることもあるようです。
また、動作時に痛みが増強する、悪心や吐き気を伴う、普段気にならなかった音や光に敏感になる、肩こりが酷くなる、など日常生活に支障がでることもあります。
偏頭痛の原因は、いまだ完全には解明されていません。
これまでの血管の拡張によるとする『血管説』や、脳血管の周囲に分布する三叉神経の周りから血管拡張や炎症を起こす神経伝達物質が出ているとする『三叉神経血管説』に加えて、最近では、脳内セロトニンの減少と偏頭痛発作との関係や、大脳深くに偏頭痛発作を誘発させる部位、いわゆる『偏頭痛発生器』が存在するという説も有力視されているようです。
一般的に偏頭痛の治療には、鎮痛薬以外に、脳の血管と三叉神経のセロトニン受容体に作用し、偏頭痛の根本的な原因をピンポイントで抑えるトリプタン系薬剤を用います。
イミグラン、ゾーミック、レルパックス、マクサルト、アマージといった頭痛に特異的な治療薬です。これらの薬は、頭痛が起きてからすぐに服用することがポイントで、服用のタイミングがずれると効果が出にくいことがあるようです。
漢方的には、偏頭痛のおもな原因は、『不通則痛(ふつうそくつう)』(通じざればすなわち痛む:流れが滞ると痛みとなる)」と考えます。つまり、気血の流れが滞り、体内に詰まりが生じた結果、痛みが発生するという状態です。
偏頭痛でよくあるタイプには、瘀血頭痛、肝火頭痛が考えられます。
冷え、食事の不摂生、過労などによって気血の巡りが滞ると、血行が悪くなり頭痛が起こりやすくなります。漢方では、血の滞った状態を“瘀血(おけつ)”といい、頭痛のタイプでも、刺すような痛みや、ズキンズキンと拍動性の痛みは、瘀血頭痛と考えられます。
普段から肩こり、腰痛、生理痛などの痛みでお悩みの方や、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が気になる方に多い傾向があります。
漢方薬では、気血の巡りを整える冠元顆粒や加味逍遥散などを用います。
ストレスや自律神経の乱れが続くと、肝の気の巡りが滞り機能が低下することが考えられます。肝気が滞った状態が続くと、肝気が高ぶり炎上し肝火頭痛が起こります目の前がチカチカしたり、めまいが起こることもあるようです。
普段からイライラしたり、怒りっぽい、悩みを抱えやすい方に起こりやすい頭痛のタイプです。リラックスする時間を作って、上手にストレス発散することが大切です。
漢方薬では、気の巡りを整え、肝火を鎮める竜胆潟肝湯や釣藤散、抑肝散などを用います。
その他、台風や曇りの日など天気や気圧の影響で偏頭痛が起こるという方もいます。このような方は、胃腸が比較的弱く、体内の水分代謝がよくない『痰濁頭痛』タイプが多いようです。
漢方薬では、胃腸の機能を整え、停滞した痰濁を取り除く苓桂朮甘湯や半夏白朮天麻湯などを用いることがあります。
女性の偏頭痛は、男性の4倍もの発症率ともいわれています。
生理や排卵期になると偏頭痛に悩まされる女性も多く、偏頭痛の発症には、女性ホルモンの影響やストレスなどが関与しているともいわれています。逆に、ホルモン変動が少ない妊娠中は、一時的に偏頭痛が起こりにくくなることもあるようです。
漢方薬で、体全体を調整しながらホルモンバランスを整えることで、生理周期に伴って現れる偏頭痛が良くなることもあります。
つらい偏頭痛は、実はストレスや睡眠不足、食事の不摂生、運動不足・・など日頃の生活習慣の中に原因があることも多いようです。
偏頭痛を慢性的に繰り返している方は、一度生活習慣を見直してみることも大切なことです。
偏頭痛は、頭だけの問題ではなく、体全体のバランスが崩れることによって起こりやすくなることが考えられます。
痛みを緩和すると同時に、漢方薬などで、体の乱れを整えて偏頭痛が起こりにくい体質にしていくことが次の痛みへの予防につながります。
慢性的な偏頭痛でお悩みでしたら、一度漢方薬局でご相談されてはいかがでしょうか。