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肩こりと漢方について

肩こりに効く漢方がある!?

「漢方で肩こりが治るの?」と言われることが多いのですが、漢方には古来より肩こりに対する様々な治療法が存在します。

肩こり肩こりは、日常的におこりやすく、辛くても治療せずに我慢してしまう人が多い疾患です。自覚がなくても、マッサージなどで毎回指摘を受けるという方もいるようです。

また、頭痛とも関連が深く、肩こりが原因による頭痛もよく見受けられます。

肩こりの原因として、同じ姿勢・眼精疲労・運動不足・ストレスなどがありますが、最近では血圧との関連も注目されています。

漢方では、肩こりの原因は、「気血の巡り」「からだの冷え」「水の巡り」などに原因があると考えます。

肩こりが日本人に多い理由

厚生労働省の調査によると、日本人が日常生活で自覚している症状のなかで、肩こりは女性では1位、男性では2位になっています。

日本人は欧米人に比べて、頭が大きい割に首から肩の骨格や筋肉が華奢にできているため、肩こりを起こしやすいといわれています。

個人差はありますが、頭の重さは5キロ前後(ボーリングの玉ぐらい!)ですので、結構な重さを首と肩が支えていることになります。特に、中年以降は骨や筋肉が弱くなるので注意が必要です。

たかが肩こりと思っていると、こりが痛みに変わり、少しでも動かすと辛いといった状態になりかねません。

肩こりを漢方で考えると?

漢方では、肩こりの原因として次のようなことが考えられます。

①  気血の巡りが滞る『気滞血瘀(きたいけつお)』の肩こり

冠元顆粒ストレスなど精神的な疲労が続くと、気血の流れが滞り肩こりの原因となります。

また、目の使いすぎや老眼の進行など目の疲れが続いた場合、目の滋養である肝血の消耗を招き、肩こりが起こります。肩こりや肩の痛みが慢性化することが多いです。

漢方薬では、冠元顆粒や逍遥散など気血を巡らせるもので経絡を通し、慢性的な凝りや痛みをとるものを使います。

②  冷えて流れが滞る『風寒侵入(ふうかんしんにゅう)』の肩こり

kakkonto睡眠中、肩が布団から出ていて冷やされるなど、風寒の邪気がからだに侵入すると、経絡の流れが悪くなり肩こりの原因となります。急に肩こりや肩の痛み、首のこわばりが生じることが多いです。

漢方薬では、葛根湯など、風寒邪を汗とともに外に飛ばし、経絡を通してこわばり(肩こり)をとるものを使います。しかし、長期に使用すると胃腸に負担を掛けるため、根本的な改善が必要になってきます。

③  水の巡りが滞る『痰湿凝滞(たんしつぎょうたい)』の肩こり

胃腸が弱かったり、お酒や脂っこい食事や過量の水分を好んでとっていると、血中に痰湿(=悪いもの)がたまります。そして水の代謝も悪くなり経絡を滞らせ肩こりの原因となります。曇りや雨の日に肩が重だるいといった症状が多く慢性化しやすいです。

漢方薬では、薏苡仁湯、防已黄耆湯、二朮湯など痰湿をとり経絡を通じさせるものを使います。

また、益宝(イーパオ)は血を巡らせ湿をとり、経絡の通りをよくする食用蟻などを使った健康食品です。辛い肩こりに、他の漢方薬と組み合わせてよく用います。

五十肩と漢方

一般に、四十肩・五十肩といわれる肩の痛みのことを、正式には「肩関節周囲炎」といいます。加齢に伴い肩関節周辺の組織に変性が起こり、生じた炎症によって痛みが起こる状態です。肩こりが筋肉の疲労によって起こるのに対し、四十肩・五十肩は関節の炎症が原因とされています。

40代以降に発症することが多く、ある日突然痛みが発生する急性期と、肩の動きが制限される慢性期があります。半年から1年半ほどで自然に痛みが軽くなり、肩が動かせるようになります。

漢方薬では、加齢による痛みの症状を緩和する独歩顆粒や、肩こりと同様、冠元顆粒、葛根湯、二朮湯など体質と状態に合わせて使います。

一般的な肩こり治療法

現代医学では、主にこりと痛みの緩和を中心に考えます。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や湿布薬、温湿布などがよく使われます。また、筋肉の緊張をほぐす筋弛緩薬や精神安定剤を組み合わせることもあります。

五十肩のような痛みが強い場合には、トリガーポイント注射(こった部分にステロイド剤と局所麻酔剤の混合液を注射する)や、高分子ヒアルロン酸ナトリウムを注射することもあります。

肩こりと漢方のまとめ

肩こりは、普段から姿勢を正し、肩を縮めたり猫背のような姿勢にならないように意識することが大事です。

デスクワークなど長時間同じ姿勢での仕事やパソコンなどでよく目を使う場合は、こまめに肩回し体操や首のストレッチなどで血行をよくしましょう。

肩を冷やさない服装、胃腸にやさしく体をあたためる食事、ストレス発散、湯船につかる、などを毎日の習慣にして、からだ全体の血行促進と筋肉を動かす習慣をつけることが肩こりの解消につながります。

今井 太郎(漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師)

執筆者:今井 太郎

漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師

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