婦人病のお悩み
女性は50歳近くになると、これまで感じたことのないからだの変化を感じることがあります。
一般的には、閉経前後5年くらいにおこる多彩な心身の症状を「更年期障害」といいます。更年期障害は個人差も大きく、症状を強く感じる人もいれば、まったく症状を感じることなく過ごす人もいます。
更年期障害は、卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減りはじめることとそれに伴う自律神経の乱れがおもな原因です。
更年期障害の初期には、
などがよくみられます。
更年期障害の症状が長期化すると、皮膚の乾燥、今まで使っていた化粧品での接触性皮膚炎(化粧品かぶれ)、蕁麻疹などの皮膚症状、膣炎や膀胱炎、頻尿などの泌尿器トラブル、骨粗鬆症、筋肉や関節の痛みなどの症状があらわれることがあります。
また、更年期障害は、女性ホルモンの低下に伴い、血圧やコレステロール、血糖の上昇、体重増加などの動脈硬化の危険因子も加わり、将来的に心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などのリスクが高まることもあります。
最近、テレビCMや雑誌などで「女性は7の倍数でからだに変化がある」といったフレーズを見かけます。
女性は49歳で閉経して、からだに様々な症状や変化があらわれるという漢方ならではの考え方です。まさに更年期障害の時期にぴったり当てはまりますね。
漢方では、更年期障害の原因として次のようなことが考えられます。
更年期障害の時期には、首から頭にかけてのほてり(ホットフラッシュ)やイライラ、怒りっぽい、片頭痛などの熱の症状がおこりやすくなります。
自律神経系と関係のある肝の栄養となる血が不足した結果、煮詰まってしまった状態です。
また、ストレスや過労が続くと、肝のはたらきが低下して肝気の流れが滞ります。うつ症状やお腹の張り、痛みの症状がおこりやすくなります。
漢方薬では、加味逍遥散や柴胡加龍骨牡蛎湯など気の巡りをよくし余分な熱をとるものなどを用います。
閉経が近づくと、女性ホルモンの分泌が減って月経のリズムも乱れやすくなります。
漢方では、加齢とともにあらわれる月経周期の乱れや冷え、足腰のだるさ、精力の減退などの症状を腎虚といいます。
からだの温度調整がうまくいかず、更年期障害特有の多汗などもよくみられます。
夕方から夜になると掌や足の裏がほてる、フローリングを素足で歩きたくなる、気が付くと布団から手足を出して寝ている、そんな経験はありませんか?五心煩熱(ごしんはんねつ)といって腎虚特有の症状のひとつです。
漢方薬では、「腎」を補う知柏地黄丸や杞菊地黄丸などを用います。
女性にとって、いくつになっても大切な「血」。血は女性のからだの原動力であり、精神的な安定をもたらすものです。
この血の不足した状態が続くと、生理トラブルや不眠、動悸などの更年期障害の症状があらわれます。
常に頭がボーッとして気力がわかない、忘れっぽいなどの症状も血虚であることが多いです。
漢方薬では、良質な血を補い、心を落ち着かせるはたらきのある帰脾湯や婦宝当帰膠などを用います。
また、血圧やコレステロール、血糖の上昇に伴い、血の流れも悪くなります。漢方では、冠元顆粒や血府逐瘀丸などの血の巡りを整えるものを併用して動脈硬化を予防します。
更年期障害では、少なくなった女性ホルモン(エストロゲン)を補充するホルモン補充療法(HRT)が一般的です。HRTでは、女性ホルモンの経口剤(飲み薬)と経皮剤(貼り薬・塗り薬)があります。
更年期障害の治療でよく用いられるエストロゲン単独の使用で、子宮からの出血や子宮体がんの発症率が高まることがあるため、それらのリスクを抑える黄体ホルモン(プロゲステロン)を併用したり、二つのホルモンの配合剤を用います。
更年期障害の症状における漢方薬の役割は、「不足していれば補い、流れが滞っていればスムーズに流す」ことによって、乱れたからだのバランスを整え女性ホルモンを安定させることです。
更年期障害の症状の改善とともに、からだ全体の調子を整えていくことができます。ホルモン剤で指摘されている発ガンや静脈血栓塞栓症などの副作用の心配もなく、安心してご服用頂けます。
更年期は“つらい期間”ではなく、“からだのメンテナンス期間”です。
その後の人生を健康で豊かなものにするためにも、更年期障害と向き合い、漢方薬を上手に活用して体質改善から始めてはいかがでしょうか??