婦人病のお悩み
無排卵とは、“排卵のない状態”です。
女性のからだでは、毎月卵子のもととなる「卵胞」が育ち、一定の大きさになると卵巣から飛び出します。
これが「排卵」です。通常、生理が終わって約14日後に排卵しますが、様々な原因でこの排卵が行われていない状態が『無排卵』です。
無排卵になりやすい症状には
などが考えられます。
無排卵には、生理が来ない無月経の他に、毎月周期的に生理が来ていても排卵のない『無排卵月経』があります。いずれも、排卵していない状態ですので、この状態を何年も放置していると、不妊の原因にもなりかねず注意が必要です。
無月経については、「無月経と漢方」をご参考頂き、ここでは生理は来るけれど排卵していない無排卵(無排卵月経)についてご紹介します。
生理があると健康には問題ないと思いがちです。
生理がある無排卵では、排卵していないことに気付きにくく、婦人科を受診してはじめて無排卵であることが分かったり、長い間放置してしまうことも多いため、不妊をはじめとした婦人科トラブルのリスクを高めてしまうおそれがあります。
また、自分では生理だと思っていた出血が、実は不正出血で排卵もしていなかったというケースも少なくありません。
無排卵月経は、卵巣がホルモンを出すことをサボりきってはいないけれど、しっかりとした「波」がなく、ホルモンをダラダラと少しずつ出している状態なので、月経も不規則になりがちです。
基礎体温を付けている場合、ずっと低温期が続く形状になりやすいのが特徴的です。
無排卵月経の場合、正常の生理と比べて次のような状態が起こりやすくなります。
特に、基礎体温上で低温期の一相性がみられたら、排卵していない可能性が高いと考えられます。
西洋での治療法は、妊娠を希望されている場合は、排卵誘発剤で排卵を促すことが多く、妊娠をすぐに希望されていない場合は、ピルなどのホルモン剤でホルモンバランスを整えることが一般的です。
一方、漢方では、正しい生理周期を作っていくことを目標に、からだ全体のバランスを整えていきます。ピルなどの薬を使っている場合でも、漢方薬を併用しながらからだの状態を整えていくこともあります。
無排卵は、卵子が排卵できる大きさにまで成長していなかったり、卵巣からポンとはじけて飛び出るための力が十分でないことで起こりやすい状態です。
漢方では、卵子の栄養である気血の不足した『気血両虚(きけつりょうきょ)』、
排卵を起こす力となる気血の流れの滞った『気滞瘀血(きたいおけつ)』、
さらに大元の卵子(主席卵胞)の質を左右する子宮や卵巣の機能低下や女性ホルモンと関係の深い『腎虚(じんきょ)』を中心に無排卵の原因を考えます。
漢方では、無排卵のおもな原因である『気血両虚』『気滞瘀血』『腎虚』の症状に対して『補気・補血』『理気・活血』『補腎』の漢方薬を中心に考えます。
不足した気血を補い卵子の発育を助ける婦宝当帰膠や十全大補湯などの補気補血薬
気血の流れを整え排卵を促す血府逐瘀丸、冠元顆粒などの理気活血薬
子宮や卵巣のはたらきを高め、ホルモンのバランスを整える参茸補血丸や胎盤エキス(オリジンP)、六味地黄丸や参茸補血丸などの補腎薬などを状態に応じて用います。
また、高プロラクチン血症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方の無排卵は、気の乱れとの関係が多くみられます。
イライラや抑うつ状態を招く『肝鬱気滞(かんうつきたい)』、さらに精神の不安定な『心火亢進(しんかこうしん)』の状態ととらえて、気の巡りをよくする逍遥散や炒麦芽、安神のはたらき(こころを落ち着かせ興奮を静める)のある漢方を用いることもあります。
PCOSは、瘀血や痰湿(余分な老廃物)タイプの方に多く、これらの体質を改善することで排卵しやすいからだを目指します。
無排卵の原因はさまざまですが、根本には、睡眠不足や過労、ストレス、運動不足など、日頃の生活習慣の乱れの影響が多くの場合にみられます。
また、卵子の栄養となる気血を生み出す脾胃(胃腸)を常にベストコンディションにしておくことも大切です。
無排卵は気付きにくい症状ですが、毎月の生理の状態を把握し気にしておくと、早い段階で症状を発見でき、漢方で改善もしやすくなります。
無排卵でお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。