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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と漢方について

卵子

多嚢胞性卵巣症候群は最近多い漢方相談の一つです。

不妊や、生理不順などに関連する事が多くお悩みを抱えている方が多いです。

漢方では『痰湿(たんしつ):悪いものが溜まっている状態』や『瘀血(おけつ):血の巡りが悪くなっている状態』と考えて、生理周期や体質を整えていきます。

一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか?

多嚢胞性卵巣症候群ってどんな病気?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)は、卵巣にできた沢山の未熟な卵胞によって、排卵すべき主席卵胞が成長できず排卵しないまま卵巣内に滞留してしまう疾患です。

軽度の肥満、月経不順または月経がないこと、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高いことにより引き起こされる症状を特徴とします。月経周期が乱れ、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高くなる傾向がみられます。

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若い女性の排卵障害に多くみられ、生理の乱れや不妊などの原因となります。

発症の原因として、ホルモンバランスやインスリン抵抗性、肥満などが関係しているといわれています。中には、10代の頃から生理不順であるケースや遺伝的要因が関与しているケースもあります。

多嚢胞性卵巣症候群をエコー(超音波)画像でみると、卵巣表面に、排卵できずに滞留した未熟な卵胞が並んでみえることから、『ネックレスサイン』と呼ばれています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と多嚢胞性卵巣(PCO)との違い

PCOとPCOS、名前は似ていますが、同じではありません。PCO(多嚢胞性卵巣)は、『卵巣内に未熟な卵胞が沢山ある卵巣の状態』を指します。

不妊治療における排卵誘発剤の使いすぎで卵胞の閉鎖不全が起こっている場合や、高プロラクチン血症による排卵障害などが原因として考えられています。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、PCOに下記の多嚢胞性卵巣症候群の症状(診断基準)があてはまった場合の病名です。

PCOSでは必ずPCOになりますが、PCOの全てが必ずしもPCOSになるとは限りません。

多嚢胞性卵巣症候群の症状

①  生理周期異常
排卵しにくいことにより、生理周期が延びたり、生理がこないことがあります。
また、不正出血が起こることもあります。

②  不妊
排卵障害により妊娠に影響しますが、排卵さえすれば妊娠は難しくないことも多いです。

③  男性化徴候
男性ホルモンの増加により、にきび、多毛、声が低いなどの症状が出ます。

④  肥満
インスリン抵抗性により、血中のインスリン濃度が高くなりやすく排卵障害を起こしやすくなります。

多嚢胞性卵巣の一般的な検査と診断

多嚢胞性卵巣症候群が疑われた場合、おもに『ネックレスサイン』『ホルモン異常』『糖代謝異常』を検査します。

○ ネックレスサイン
・経膣超音波検査にて卵巣に多数の小さい卵胞がネックレス状に見られる(片側の卵巣に12個以上)

○ ホルモン異常
・生理2~5日目のホルモン値がFSH(卵胞刺激ホルモン)<LH(黄体形成ホルモン)と正常時の値を逆転する(正常時:FSH>LH)
・男性ホルモン(テストステロンやアンドロステロン)値も高値となる

○ 糖代謝異常
・糖負荷試験にて、血中インスリン値が高くなる。(インスリン抵抗性)

また、多嚢胞性卵巣症候群の10~30%に、血中プロラクチン濃度が高くなる軽度の「高プロラクチン血症」がみられることがあります。

プロラクチンは、排卵を抑えて妊娠しないようにするホルモンで、多嚢胞性卵巣症候群における卵胞ホルモン値の高い状態が、高プロラクチンに関与しているといわれています。

西洋医学での一般的な多嚢胞性卵巣症候群の治療法

西洋医学では、多嚢胞性卵巣症候群の治療として、

・排卵誘発剤(クロミフェン、hMG-hCG療法)
・高プロラクチン血症薬(カバサール、テルロン、パーロデルなど)
・外科的手術(腹腔鏡下卵巣焼灼術)

などで排卵を促す方法が一般的です。ただし、HMG-HCG注射による刺激によって、卵巣が腫れる『卵巣過剰刺激症候群(OHSS)』になることもあり注意が必要です。

また、インスリン抵抗性のある多嚢胞性卵巣症候群には、糖尿病の薬であるメトフォルミン(グリコラン、メルビンなど)を服用することがあります。

糖尿病の薬で血糖を下げて、インスリンの過剰な分泌を抑えるので、卵巣内で男性ホルモンも抑えられ、ホルモン環境が改善され、排卵しやすくなると考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を漢方で考えると?

漢方では、多嚢胞性卵巣症候群は、ドロドロした不要な水分や脂膏が溜まった『痰湿(たんしつ)』や血行不良により血が停滞した『瘀血(おけつ)』が卵巣周囲にこびり付き、卵巣の上層にある白膜を硬くし排卵を妨げている状態と捉え、おもに『痰湿』『瘀血』を改善することを考えます。

重度の場合でも、漢方薬とクロミッドなどの排卵誘発剤との併用で、スムーズな排卵を促し改善することもあります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方って?

① 血行不良で排卵できない『瘀血(おけつ)』

血の流れが良くない『瘀血』の状態は、痰湿同様、卵巣膜を硬くし排卵を妨げます。

冷えや、ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、気が滞ると同時に血も巡りも悪くなることが多いです。

漢方薬では、活血のはたらきで気血の巡りを整える桂枝茯苓丸や芎帰調血飲、水快宝などを用います。

また、良質な血が不足した状態は、いわゆる栄養不足の状態で、質のよい卵子も出来ず排卵にも影響します。

体質的に普段から疲れやすい、血の不足しがちなタイプの方には婦宝当帰膠など補血の漢方薬をベースに用います。卵子の発育や排卵する力をつけるために補腎薬を併用することもあります。

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② 水分代謝が悪く排卵できない『痰湿(たんしつ)』

胃腸機能の低下によって水分代謝が滞り、体内に余分な水が溜まった状態を『痰湿』といいます。

多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣のまわりに痰湿がこびり付いて、卵巣膜が硬くなり排卵しにくい状態になっています。

漢方薬では、化痰・利湿のはたらきで痰湿を取り除くシベリア霊芝(チャガ、カバノアナタケ)や温胆湯などを用います。

多嚢胞性卵巣症候群のまとめ

妊娠希望がある場合、排卵障害を伴う多嚢胞性卵巣症候群では、タイミングをとりにくく妊娠しにくい、という面もあります。

しかし、排卵さえ出来れば妊娠できることも多く、“質の良い卵胞が育って毎月排卵があるかどうか”が非常に重要なポイントとなります。

排卵に十分な大きさの良質な卵子が育つためには、睡眠や食事など日々の生活習慣も大きく影響します。

女性ホルモンの分泌が最も盛んになる夜の10時~2時頃は、漢方では『陰』の時間帯といわれ、質の良い十分な睡眠で陰が養われ、卵胞の発育を助けるまさにゴールデンタイムです。

また、多嚢胞性卵巣症候群の原因となっている痰湿や瘀血は、日頃の食生活や胃腸の状態が影響しています。

冷たいもの、アルコール、脂っこいもの、甘いものなどの取り過ぎは、胃腸のはたらきを弱め、痰湿を溜めやすくさらには瘀血を引き起こします。

ストレスが多く、睡眠不足が続き、外食が多く、冷たいものをよく飲む、といった生活パターンの方は要注意!多嚢胞性卵巣症候群の始まりは生活習慣からといっても過言ではありません。ぜひ、ご自分の毎日の習慣から見直してみてはいかがでしょうか?

漢方薬の服用の際は、このようなライフスタイルの改善のご提案もさせていただきながら、自然治癒力・免疫力向上のサポートをしておりますので、お悩みの方は一度ご相談ください。

今井 太郎(漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師)

執筆者:今井 太郎

漢方の後楽堂薬局 薬剤師/薬学博士[Doctor of Pharmacy]/国際中医師

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